Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

目を輝かせる練とは違い、聖は無表情で桜士たちから目を逸らしていた。それはまるで何かを隠そうとしているように見え、桜士は訊ねる。

「青羽くんはどうでしたか?消化器内科の研修」

「えっと……楽しくはなかったです……担当していた患者さん、急変されて亡くなってしまったので……」

感情を殺した淡々とした声で聖は口にする。その様子を見て、「宮崎さん」とヨハンが名前を呟いた。一花の顔からも笑みが消え、どこか苦しそうな表情になる。

「あんなに、元気にしていたのに……」

聖の瞳には涙が浮かんでいた。一花がそっと彼に近付き、背中をさする。

「初めてだったよね、人が亡くなるのを見るのは。……医者は、神様じゃないから全ての人は救えない。だから、ああいうことも起こってしまうの。だけどそれに慣れないで。その人が感じた苦しみ・痛みを理解してこそ、立派な医師に立派な人に一歩ずつ近付いていくの」

「……はい」

聖が涙をそっと拭き取ると、「カンファレンスにそろそろ行こっか」と藍が二人に声をかける。