『そんななっちゃんに朗報。なっちゃんはね、仁が初めて自分から行動した女の子なんだよ』


そう、お店を出る前にこっそりと一華さんが教えてくれた。────


「先乗って」


握られた手を引かれるがまま、目の前に長めのエスカレーターが見えた。


夕凪くんは私が先に乗れるように、掴んでいた手を手首にズラし私の体を力強く持ち上げる。


そのままヒョイっと飛び越えるようにエスカレーターに乗った。夕凪くんも続いてすぐ後ろに乗る。


ずっと、胸の鼓動が尋常じゃない。
どこに向かっているのかも、この状況も何もかもわからずに、頭がパンクしそう。


エスカレーターに乗ってもなお、大きく骨張った手が私の手首を掴んでいて。
このドキドキが、手首から熱を持って夕凪くんに伝わってしまわないかと焦る。


一華さん達はお姫様みたいだと褒めてくれたけど、周りから見ればきっと、私は今、夕凪くんに捕獲されたカメみたいじゃないのだろうか。