時が流れ、高校2年生になった私は、いまや彼を見届けて高校に向かうのが毎日の日課になった。
こっそりと見つめているうちに、彼のことも少し知ることができた。
私と同い年の高校生で、名前は"夕凪仁くん"。
名前まで力強くてかっこいい。
そして私が通っている高校より二駅手前の駅で降り、黒霧学院高校という男子高校に通っている。
何度も声をかけようと思った。
自分ができなかったことをやってくれた彼に、ただお礼が言いたかった。
だけど勇気が出ず、結局いつも勝手に見つめるだけになってしまう。
『まもなく〜虎渡駅、虎渡駅〜です』
電車通学をし始めてから、自分が降りる駅以外反応もしなかったのに、この駅が夕凪くんの降りる駅だと知ってからは、見事に反応してしまうようになっている。
(夕凪くん、いってらっしゃい。どうかお気をつけて……)
毎日目立つ格好をしている彼に、私は心の中でそう呟いた。