それからの私たちは、健全なお付き合いをすると約束して、校長先生にもなんとか受け入れてもらえた。
その甲斐あってか、学校通しのしがらみも3年生になった今では減ってきている。


夕凪くんは電車通学に戻り、毎朝一緒の電車に乗っている。
朝の混雑を避けるために早い時間帯で学校に行くのは眠たいけど、毎日彼と一緒にいれる時間が嬉しい。


しかも夕凪くんは亀湖駅で一緒に下車して、少しお喋りをしたあと、わざわざ虎渡駅まで戻ってくれるのだ。


「私…、本当はこんなに聞いてほしいことがたくさんあったんだって、夕凪くんに出会って気づいたんだ」


今日もまたベンチに座って、彼と二人の時間を過ごす。
お互いの膝と膝がくっつくほど近い距離で。


「夕凪くん、ありがとう」


「急に、なに……」


「私が、できなかったことをやってくれて、ありがとう。私に、声をかけてくれて……話すのが遅い私を、嫌がらずに待ってくれてありがとう……っ」


今までたくさん話して自分の気持ちを喋ってきたはずなのに、まだ思いを伝えると我慢できずに涙が出てしまう。
これでも随分と言葉にできるようになったほうだ。