「なぁ、仁。今朝右京の車で来たのって……ほんとは母親が原因なんじゃないの?」


月曜の放課後。誰もいなくなった教室で、湊人にそう言われる。


「……あぁ……なんか、探されてるっぽい。右京にはそこまでする必要ねぇっつったけど、しばらく一華んとこ居座って送迎付き」


「そう……」


眉間に力を入れ、視線が落ちていく湊人。


「いや、笑えよそこは。過保護かって」


そう言えば、力なく笑った。
こういう顔されるから言わなかったんだけど……


幼なじみの湊人は俺の事情をよく知っている。不良になった原因も。
元々湊人は黒霧に来るようなヤツじゃなかった。真面目で、ケンカなんかしないし、どちらかといえば優等生だ。


俺より勉強ができるのにテストで本気を出さないのは、少しでも不真面目に見せようとしてるのか……


何はともあれ、俺が湊人を不良にしてしまったようなもんだった。