…もしかして…ち、痴漢……?────


いつもの時間帯より遅い、通勤・通学ラッシュの電車に乗っていた私は、目を疑うようにパチパチと何度か瞬きをし確認した。


(やっぱり、痴漢だ…っ!)


確信するとゾッとして体が固まる。
衝撃と恐怖で全身が凍るようだった。


サラリーマンの中年男性に痴漢されていたのは、もちろん地味で可愛くない私ではない。


私の近くにいた、他校の桃ヶ丘女子高校の制服を着ている女の子。
可憐な印象を受けるその子の顔は、誰がどう見ても青ざめていた。


(どうしよう、助けないと……っ)


でも声が、声が出ない……


その子に自分の手を伸ばそうとしても届かず、彼女の体を引っぱることもできなかった。


それでも、なんとかして助けなきゃ…!と、顔が熱くなるのを肌で感じながら、無理やり声を出そうと胸をぎゅっと押さえる。
トントン叩く。