3人の添乗レディー


「お客さん、今夜はナイトラウンジ”リップゲート”の送迎花タクシーにご乗車、ありがとうございます」


運転手は若い男だった。
まあ、店のフロントボーイかマネージャーかはわからないが、にわかホストっぽい染めヒゲの兄ちゃんだったような記憶がある。


でもまあ、キメのきちっとした最初のあいさつは気分よかった。
ということで、車はゆっくりとしたスピードでスタートしてね…。


「お客さん…、短い時間になりますが、できる限り楽しく接しさせていただきたいんで、まずはお名前伺っていいですか?」


「ちなみに仮名も可ですよ。ニックネームでもいいですからねー」


”助手席の女と助手席側は完全、同じ店の阿吽のツーカーだわ。で、左側のジミ女は新入りかな…”


オレはこの時点で、車中4人の目利きを済ませていた。


***


「奥山です。ちなみに本名でーす!」


”アハハハ…”


ここで一気にに空気は”定着”した。


”さあ、この後、どんなメニューがでてくるんだ?”


オレはもう”お楽しみ”モードに入ってて、これから始まる自宅までの約45分間をウキウキした気分で想像してたかな…。


***


「…奧山さん、私はリップゲートのりりかです」


そう言って、助手席から後ろを振り返った態勢で、りりかはミニサイズの丸角名刺を差し出してきた。


「それで、奧山さんの右となりがキヨエちゃんです」


「奧山さんとは、もしかしてご近所かもの夜更かし娘、キヨエでーす。ちなみに仮名で~~す💛」


「キヨエちゃん、この場合、源氏名とかって言ってよ、ねえ…」


”アハハハ…”


「じゃあ、左の彼女にはあえて本名を聞いちゃおうかな?」


「あら、奧山さん、彼女が私やキヨエちゃんと肌色違いだってわかったのかしら?」


”さすが、海千山千の夜の蝶は喰えないねー”


***


「…やっぱりか~。なら、この彼女は、6時間前までお堅い仕事バリバリだったキャリアウーマンかな?」


「どうなの、タカコちゃん…」


夜の蝶は相の手もまさに絶品だった。


「”元”はです…」


「わかりました。それ以上はいいですよ。タカコさん…」


「はあ、すいません…」


彼女がほっとしたような表情になったのを、その時のオレは見逃さなかったよ。
これでタカコが”シロートさん”だと悟った。


”なら、もう成り行き任せだな”