税務署全体で歓迎会が行われた。

たまたま、俺の隣が北山さんになり
話しをした。

「税務署の職員採用試験を受けたい。」
と、言う彼女に
「わからないことは訊ねてくれたら
教えるよ。」
と、言うと
すごく嬉しそうに
「ありがとうございます。」
と、言う彼女を可愛いな
と、思っていた。

まあ、沙良以外の女性に興味はないが。

だが、仕事をしながら
勉強を頑張っている北山さんが
デザインを必死に作っていた
沙良とかぶり
頑張っている彼女を食事に誘った。

今、一人で食べる事の多い中で
久しぶりに誰かと話しながら
食べる食事が美味しくて
それに、食べ終わった後に
ニコニコしながら
お礼を言ってくれる彼女が
とても可愛く思えて
この笑顔がみたいと
つい何度も一緒に食事をした。

水曜日は、ノー残業デーの職場だから
木曜日は、仕事が溜まって
と、苦しい言い訳を沙良にするも
「忙しいんだね。体に気をつけてよ。」
と、言う沙良に
簡単なんだな。俺に興味ないの?
と、バカな俺は、思ってしまった。

沙良は、俺を信用してくれて
疑う事もしてなかったのに。

それからも木曜日は、
絵美ちゃんと食事に出掛けた。

ただ、食事をするだけだから
沙良に悪いとか思っていなかった。

でも、絵美ちゃんが
あまりにも喜んでくれるから
県外の美味しいレストランにまで
手をだして沙良が仕事で
土日不在の時には
日帰りで出掛けた。

そんな時
「よそ行きのコートが出ているけど
どこかにでかけたの?」
と、土曜日の夜
仕事から帰ってきた沙良に
訊ねられて
「あっ、少しブラブラしてきたよ。
一人だったから。
あっ、沙良にお土産あるんだ。」
と、言い渡したのは
ハンドクリーム。

「·····えっ、うん。ありが····とう···。」
と、言う沙良の手に渡しながら
「なんか、手がツルツルに
なるみたいだよ。」
と、続けざまに伝えた。

沙良は、ハンドクリームを
ダイニングのテーブルに
置いてから
「ごめん。疲れたから寝るね。」
と、自分の部屋へと行った。

それを見て、
沙良の気持ちも考えずに
なんだよ、せっかく買ってきたのに。
と、一人でイライラしていたが
これを選んだ時の絵美ちゃんの
顔を思い出すと
イライラも収まっていた。

この時、沙良がどんな顔を
していたか、なんて、
浮かれていた俺には
わかるはずもなかった。