「では、こちらへどうぞ。
大人しく出て行かれた方が
宜しいですよ。」
と、丁寧だが威圧のある言い方
の警備の方。

本当に不審者だと?

だが····
「結城課長は、やり手の方です。
警備会社にもうお二人の事は
報告されています。
もう、こちらには入れません。」
と、釘を刺された。

情けない、情けない、情けないし
恥ずかしい。

いったい、何をやっているんだ。
北山さんは。

いや違う、俺だ。

たかだか知りあって数カ月の人に
ペラペラ夫婦の話をして
一緒に食事をすることが····楽しい
癒やし·····だ、なんて······

沙良は······ 一生懸命·····
仕事をやっていただけなのに。

沙良のデザインする家を待っている
人がいるから頑張っているのに
俺は····俺は······

俺は、警備の人について行くが
北山さんは、ソファーから
立ち上がらない。

だが、彼女に声をかける気にならずに
いると·····
「ほら、あなた、立って下さい。」
と、警備の方に託される
それでも動かない北山さん。

警備の男性もむやみに女性に
触れないから
女性の警備員が来て
彼女を立たせて
正面玄関ではなく
裏口に案内された。
「お引き取りを」
と、言われた。

俺は、北山さんに感知せずに
歩き出した。

どうして
どうして
どうして

頭の中では·····
沙良の言葉か·······

不貞をしていて······
嘘だったの·····
彼女が、好きなら離婚して·····
何より俺を高木さん·····と。

どうして····
 
あんなに幸せに日々を
  送っていたのに·····

俺は、自分の事でいっぱいで
北山さんの事を考えてもいなかった。