涙を流す早都に
テッシュを渡してあげようとは
思わなかった。
私は、冷たいのかな?
だから、早都からも捨てられたんだ。

「早都。この間
ハンドクリームをお土産にくれたよね。
あれは、早都からではなく
彼女が選んだのでしょ?
そんな物を
渡されて喜ぶとでも?
ほんとに情けない。
二人で食事をしている事も知らない
私を二人で笑っていたの?
これで、騙せると?」
と、ひどい言葉をかける私に
早都は首を振りながら
私を見たから
「何故彼女からだとわかったか
と、言うとね。
あれは、下着メーカーが
作りあげたクリームなの
だから、そういう売り場でないと
売ってないの。
もしかしたら、あなたが
彼女の為にそんな売り場に
行ったと言うなら別だけど。」
と、言うと
はっとした顔でこちらを向いた早都に
良かった、早都が買いに行ったのでは
ないとわかった。

これで、早都が行っていたなら
私は·····どうしていたか。
でも、もういい
これ以上は無理だ。
だから······

「早都。
これから先、本当に好き人を
作るときは、目移りしないような
素敵な人を見つけてね。」

平気で嘘をつかないで
と、言いたかったが
私が言う必要ないと思った。 

私だから騙されただけで
他の人なら騙されないし
まして、他の人に目が行く事は、
無いと思ったから。

話は終わったと思い
私は、自分の飲んだコーヒーカップを
キッチンに持って行き
簡単に洗い
自分の部屋へと行き
かばんで持ち出した荷物だったけど
キャリーケースに荷物を詰める。

早都の寝る寝室の
クローゼットの中も見る

あのハンドクリームは、
ベッドのサイドボードに
置いたままになっていた。

クローゼットの中の
早都が買ってくれたコートや
早都が似合うと言ってくれた
ワンピースなどは
持っていかない。
思い出がありすぎる。

化粧品等は、持っていけるだけ
持ち出す。

準備ができて玄関に向かう
リビングを通る時
「後の手続きは、第三者に
入ってもらうつもりだから。
荷物は早く運ぶようにするから
すみませんがお願いします。
鍵は、持って行きますが
むやみに使わないから
心配しないで。
部屋に入る時は必ず連絡します。」
と、声をかけた。
このマンションに
二人が一緒にいる姿なんて
見たくないし······

早都からの返事は
なかったが
私は玄関から外にでた。

見送りや引き止めもないよね。
当たり前か。
まあ、引き止めや見送りが
あっても困るけど。

玄関がしまった······

六年間築き上げてきた
私達の絆は
一瞬で崩れてしまった。

本当に早都を心から愛していた。

まさか····私達に終わりが
来るなんて·····

涙が次々に溢れだし
手の甲で拭きながら
歩き始めた。