「大和・・・・ごめん、もう一回言って」
 次の日の放課後、部活が琴音も春斗もなかったのでカフェへとやってきていた。お土産も二人に渡す。だが目の前の二人はそれどころではなかった。
「昨日海行って遊園地行ってお試しで付き合うことになった」
「・・・・だれと?」
「先輩と」
「だれが?」
「私」
「・・・淡々としすぎじゃね?」
「・・・・そういう夢の話じゃないよね?」
「夢・・・なるほど、そういう可能性もあるのか」
「ねぇよ!」
 突然の声に振り替えれば優真が眉間に皺を寄せて立っていた。
「なんで夢の話になってんだ」
「「大和が恋愛なんて想像できない」」
「・・・声をそろえていうんじゃねぇ」
 ため息をつきながら隣の別の席に座る。その向かいにはあの時ヘルメットを貸してくれた鈴木隼人の姿。ただ一日で髪色がワインレッドに変化していた。
「あれ?君らもここにきてたの?」
「昨日は助力いただきましてありがとうございます」
「あぁ、いいのいいの。面白くってあの後おれもさぼっちゃったから」
 楽しそうに笑う隼人に気おされる春斗と琴音。
「そんなことより二人は付き合うようになったんでしょ?明日のホテルバイキングも俺のおかげだし」
「あのバイキングは鈴木先輩からだったんですか」
「うん、うちのホテルだし」
「うちのホテル?」
 聞き返す大和に春斗が耳打ちをする。このおちゃらけた楽しそうな鈴木隼人はこのへんじゃ有名な鈴木組の跡取りなんだそう。学校でも知らないのは大和ぐらいらしい。
「そうなんですね」
「そうそう、とりあえず優待券もらったんだけど行く機会なくてさ。優ちゃんにあげたの」
「・・・優ちゃん」
「優真だから優ちゃん。俺のことははーくんって呼んでね」
「はーくん先輩、精一杯堪能させていただきますね」
「うん、素直でかわいい」
「おい」
 楽しそうにケーキを頬張る隼人に少し眉間に皺を寄せてコーヒーを飲む優真。そういえば夢かもしれないという話を聞かれて話が進んでいなかったな。
「でも少し思ったんですけど、お試しも夢みたいなものじゃないですか?」
「いや、少なくとも俺はお試しで終わらせる気はないんだが」
 大和の手を引くと店を後にする。
「ねぇねぇ、めちゃくちゃ面白そうだよね!」
「・・・はぁくん先輩、悪い顔してますよ」