「大和・・・あれ?どこいった?」
 チケットを買って振り返ると大和の姿がなくあたりを見回す。少し離れた場所で外国人の観光客と会話をしていた。
「大和」
 その声で気が付いた大和が手を振って別れた。向こうはカップルのようだ。
「何話してたんだ?」
「イギリスで同級生だったみたいです。忘れてたんですけど」
「イギリス?帰国子女なの?」
「まぁ、そうですね」
 とりあえずチケットを持って中に入る。そこはクマのマスコットキャラクターで有名なテーマパーク。オリオンワンダーランド。
「さて、何から乗る?」
「言っていないことがあるんですけど」
「なんだ?」
「遊園地って初めてなんです」
「へぇ・・・・え?」
 周囲を不思議そうに見まわしながら歩き始めた大和。平日のこの時間は空いている。ふらふらとしている大和の手を取る。
「大和!とりあえずたのしめ!」
 きらきらと輝く笑顔にあっけにとられながら手をひかれはしゃぐ優真に少し微笑んだ。とりあえず乗り物より周囲を見て回ることにした優真はふと小さなワゴン車に目を止める。
「大和!これつけよう!」
「なんですかこれ?」
 優真が手にしたのはクマの耳が付いたヘアバンド。優真はそれを大和につける。つけられたそれを設置された鏡で見ながらその耳を触る。
「これつけるんですか?」
「・・・・かわいい」
 優真は口元に手を当てる。よく見れば頬が赤くなっていた。その手には大和が着けているものとおそろいの物を持っている。大和はそのヘアバンドを取ると優真の頭に着けようとする。が、身長差があり届かない。
「あの・・・笑ってないでしゃがんでもらっていいですか」
「・・・ふふっ」
 優真はしゃがむと大和は試行錯誤しながら頭に着けた。
「うん、できました」
「さんきゅ」
「ふふふ、楽しいデートを」
 店員のお姉さんに見送られてふと大和は疑問に思っていたことを口にする。
「デートって定義としては恋い慕うものが日時を指定して会うことらしいんですが」
 そう言って大和は携帯の検索画面を優真に見せる。
「俺は恋い慕っているが?」
「でも日時を指定してませんよね?」
「引っかかってるのはそこか」
 優真は楽し気に笑う。
「なんで笑うんですか」
「お前は細かいことを気にしすぎなの。雰囲気って言うのも大事だぜ」
 納得してない大和を他所に優真は再び手を引くと歩き始める。
「とりあえず今のこの状況楽しもうぜ!初めてなんだろ?」