「素性が判明致しました」
 大和を連れ出した男の素性を直樹に調べてもらっていた。直樹は態度は最悪だが仕事は早い。その日の夜には情報を集めたらしい。
「名前は山中優真。学年は一つ上で幼少期にホテル火災に合い両親を亡くし母方の祖父母の元で暮らしています」
「・・・それだけか?」
「まぁ特にこれと言って後ろ盾があるような情報は」
「違う」
「・・・あぁ、大和さんとは特に何もないようですよ」
 大和の先輩というだけか。こちらは千家頭首である千家遼輔と話をつけて婚約をこぎつけた。明日その書類を大和の姉である絢音が持ってきてくれる手筈になっている。
「・・・悪い顔してますねぇ」
「ようやく手に入るんだぞ」
「めちゃくちゃ嫌われてますけどね」
 痛いとこをついてくるあたり腹立たしい。だが何故大和がそこまで嫌っているのかは全く見当がつかない。そこまで話したこともない。
「何がいけないんだ」
「まあ、予想はついてますけどね」
「なんだ、その予想ってのは」
「第一印象が最悪なんですよ」
 第一印象・・・最初の記憶はきらきら輝いている印象しかない。
「忘れているようですから言いますが、子分宣言したんですよ」
「・・・・そんなことで嫌いになるか?」
「あの頃、大和さんは悠人さんと絢音さんにいじめられていてオリビアさんに読み聞かせてもらっていた物語の王子様に夢中だったようです。そんな中、婚約者だと言われてから子分宣言。どう考えても苦手意識どころか嫌いになる確率は百パーセントですよ」
 それを今になってまで苦手意識を持たれてもどうしろというのだ。こっちは初恋でようやく見つけてさらに恋焦がれているというのに。
「その婚約、本当にするんですか?」
「あぁ?するに決まっているだろ」
「大和さんの気持ちを無視していいんですかねぇ」
「そんなの捕まえなきゃ話にならん」
「そういえば全速力で逃げられてましたね。可哀そうに」
「本気で憐れむな!」
 取り合えず明日、大和が正式に婚約者に戻るんだ。話はそれからだ。