とりあえず腕を引かれるまま歩き続ける。
「ったく、あのメンツじゃ話もできねぇ」
「あの」
「とりあえず呼び方か・・・いや、しかしだな」
「あのぉ」
「その前のはなしか・・・」
 大和の声が聞こえていないようでぶつぶつとつぶやいて歩き続ける優真にとりあえず大和はしゃがみ込んだ。
「うおっ!」
 その拍子でバランスを崩した優真を後ろから支える。
「私のこと思い出しましたか?」
「・・・わるい」
 ようやく足を止めた優真。
「で、どうしてお店出たんですか?」
「二人で話がしたかったから」
「ふむ、なら家にきますか?」
「いやいやいや、一人暮らしだよね?男を簡単に家にあげちゃダメ」
「・・・抵抗したら私の方が強いですけど」
 護身術などの教育を受けていた大和の方がいとも簡単に優真に組み強いられたとしても大和が勝つだろう。だが、そういう意味じゃないのだ。
「いや、そうだけどそうじゃない」
 何が言いたいのかよくわからない大和は首をかしげる。ふと大和の背後に手を伸ばす姿を見て優真は間一髪大和の身体を引き寄せる。
「お前・・・なんだよ」
 その声に振り替えればスーツ姿の咲良の姿があった。だが咲良より大和はその背後にいる人物に目を見開く。
「あら、ひさしぶりね。大和」
「・・・お久しぶりです」
「せっかく海外に行ったのだからそのままいてくれればよかったのに。わざわざ引き戻すなんてお父様は何を考えているのかしらね」
「あんたら何か知らねぇけど、デートの邪魔してくれてんじゃねぇよ」
 優真は大和の肩を抱きながら咲良が伸ばした手を振り払う。
「悪いが、当家の話で俺と大和は再び婚約者になった」
「・・・あ?」
「よかったわねぇ、大和。千家としての正式な婚約よ」
「だからそいつを」
 伸ばされた手を優真は再び振り払う。
「悪いが大和はやれない。どんな奴だろうと俺がやっと手に入れたものなんでな」
 優真は笑うと大和を抱き上げて走り出した。
「あっ、あの!」
「わるいな、俺は一つ年上ではあるが存外心は広くないから手放してやる気はないし、嫉妬深いんだ」
 そういいながら足を止めない優真に大和は肩に顔を埋めた。