🐓31


そう答えた途端、天井がグルグルと
回転してフローレンスは目をガシッとつむり頭を抑える。
揺れる揺れるグルグルグルグル

「う、う"う"ぎもぢ悪ぃ」

吐きけを模様した途端回転が止まった。

ヨロヨロしながら、ひ、貧血?
血圧の急上昇?
17なのに高血圧症?

フローレンスはバタンと倒れ気絶
してしまった。








「お、お嬢様、起きてくださいまし、兄上様、カール様が御友人と
お帰りになるそうでございますよ。」


「ふあああぁ」
フローレンスは背伸びをしながら
まだあかない目をフーッ擦った。

「あ!!ヤバ、アレ実家?」

フローレンスがバタバタしていると
メリーが叫ぶ!

「お嬢様、
早くお着替えくださいまし
お客様がみえられますのに」
ソソクサと着替えを薦めるアンナや
メリー
慌て過ぎてアンナの足がギクッイタ


アイタタタ足さえ丈夫ならなんでも出来ますのにーと呟くアンナ

「アンナ足大丈夫?
自分でやるからアンナは
休んでいて」

そういうとフローレンスはアンナの
足を撫でた。

「お嬢様」

アンナとメリーは目配せをして
『絶対、お嬢様には
お幸せになって頂かないと
今日が大チャンスよ』

メリーも黙ってうなずいた。


いつものように窓から木に飛び乗り
スルスルスルーとっと「え!」
アンナがスカートを
引っ張った。

「お嬢様、今日は可愛らしくして
待て!とカール様から言われて
おります。」


「え、えぇなんで?」


「兄上様の御命令です!」


「ヒエーッマジ‼️」

フローレンスは仕方なく
浮いた腰を下げ
黙ってドレッサーの前に座った。
メリーとアンナが栗色の髪を梳き
ピンクの花の髪留めでフワフワに
可愛らしく結い上げた。

「ね、どなたがいらつしゃるの?
お友達って・・」

アンナもメリーも困った顔をするだけで答えてはくれない。






あの日


「旦那様、どうされました?
その、方達は?」

「ああ、ただいま」
モーリスはにこやかに出迎えたルーシを軽く引き寄せキスをした。

ルーシは突然現れた4人の若い女性を見て驚いた。

黒いマントを着て魔女独特の黒い
先の尖った帽子
それに虚ろな目をして立つフローレンス
の後ろに立つ懐かしい顔に目を見開いた。


「お、伯父上様、フローレンス
・・・!」

その後ろには仕立ての良いクリーム色の服を着た50代後半の女性が
現れた。

ルーシは目を疑った。

「おっ、お・・母様」
ルーシは唇を震わせ信じられない
と言う顔をしていた。

「げ、元気にしてた?
ルーシ」
ルーシの母ケニーも、一歩足を踏み出しルーシに飛び着いた。

ルーシは信じられないと言わん
ばかりにただ放心状態
恐る恐る母ケニーの背中を抱いた。

「お母様、会いたかった。」


「ルーシ」

2人は抱き合って涙した
フッと母親の肩越しに見えた
様子の違うフローレンスを見て我にかえったルーシは

「フローレンス!」
と叫んだが

「話は後で、フローレンスを寝かしましょう。」

ケニーがそう言うとカールが
フローレンスを抱き抱えフローレンスの2階の部屋へ向かった。

昔ながらの階段は木目が綺麗で窓から指す光がフローレンスを抱き上げたカールをつつんでいた。


「フッ殿下に見られたら打首ものだな!」
カールは腕に横たわる愛しい妹を見て苦笑いをした。




「お茶をたのむ!
アンナとメリー
もフローレンスの傍にいてくれ


年寄り達にも、いや全員分のお茶を頼む。
皆、使用人とは言え小さな屋敷だ
家族同然、いや家族なのだから
全員協力してほしい。」


モーリスがそう言うと何人かの
使用人はザワザワと顔を見渡した。

「旦那様、ありがとうございます
わたくし達は喜んで御協力致します、お嬢様はわたくし達にとっても大事なお方です。」

フローレンスの部屋からカールが
出て来たところで丸い楕円形の
テーブルにお茶が揃った。


この細長いテーブルも地道に年寄り
の手作りだが木目調の綺麗なツヤは
輪島塗りにも負けないくらい美しい
八十過ぎが大半、なんせ暇なもんで丁寧に丁寧に、ユツクリ時間をかけて作ったものだ。

手をかける暇など惜しまない
毎日暇だから・・・

コーヒーなどの高級品は無いが
年寄り手作りの、ハーブティー
レモンティー、ストロベリーティー、ラズベリーティー
が並んだ季節ごとの手作りのお茶だ。


何にしても自給自足な生活
買うとしたら電気とガス

肉は山に🐗、🐔、🦌魚は海に、野菜は村人が常に持って来て
玄関にポイ置き!
この土地は貧乏すぎるが人情には厚い。

屋敷の年寄りも得意な事を好きな時にやる。
年寄りとはいえ皆体力はある。

悪いとこと言えば歯とまれにアンナ
達のように足を傷める者もいる。
だからと言ってアンナは事務系
裁縫、座って出来る得意な事をやる

暇だから仕事を探して暇つぶし
だから皆忙しい。


四魔女達も香りの良いお茶に感激して湯気のぼる香りを堪能していた。


「全員揃ったから私から説明しょう、私はウイリアム、スミス
モーリスにとっては義兄に当たります、ルーシは私の妹」

そこにいた年寄り達は目を丸くして
焦りまくり椅子から降りて跪いて
頭をたれた。


「ま、待て待て、そんなんなら
話が出来ない!
皆席に着いてくれ!
公務では無いのだから!」
慌ててウイリアムは年寄り達を抱え
あげる。

「勿体ない、勿体ない!」
と年寄りは口々に呟いた。

やっと年寄り達が席に着くと
ウイリアムは口を開いた。

「ルーシやカール、フローレンスを大事に思い、仕えてくれてありがとう、訳あって私達は会うことを
苛まれていた。
しかし又家族として会うことが
叶えられました。
これからもよろしくお願いします。
この四人の魔女達は私の気の置ける友人だ、心配しなくても良い!」

年寄りは魔女と聞いても長年生きて
来て、何時どうなるか分からない年齢、誰も魔女を恐れてはいない。

年寄り達はニコニコ嬉しそうに
頷いた。


それからウイリアムは、あの日の事を話始めた。





「赤いリボンと青いリボン
フローレンス選ぶとしたらどっち
だい?」

マヤがフローレンスの目をジーッと
見て聞いてきた。

フローレンスも最初はシッカリして
いたが段々ポワンポワンして来て
口から出た言葉に驚いた。

「赤い・・・リボン!」


その後気分が悪くなり眠った。



「コンコン、お客様、お客様!」

ふと車のガラスを叩かれ、カール
とモーリス、ウイリアムが目を覚ました。
体にモワモワとした毛布が掛けられ
温もった体をなでた。


アッ

「フ、フローレンスが居ない!」

「え!」
とバタバタする三人にピットは優しく微笑んで言った。

「大丈夫でございます
フローレンス様は
先にお目覚めになり、カフェに来られてお待ちです。」

カフェの従業員のピットは3人に
名刺を渡し微笑んだ、イギリス生まれの貴族育ち、紳士な態度に
モーリスもウイリアムもカールも
妙な信頼を覚えた。


こんなにバタバタしたのに
運転手はまだ目を覚まさない眠った
ままだ。


「オイ、大丈夫か?」
モーリスが気ずかい声を掛ける。


「この方は大丈夫で御座います。
あちらでオーナーと、フローレンス様と皇妃であられます美桜様が
お待ちでごさいます。」


「美桜様が!? 何故いらっしゃるのだ?」

カールとモーリスとウイリアムは
ポカン


「ああ、ご存知ありませんでしたか?ココは美桜様の、ご実家の様なもので親しくさせて頂いております王のレイモンド様も
よくおいでになりますよ。」


聞いた事の無い話にウイリアムも
カールもモーリスも唖然とした。

「よく城へは行くが
外で美桜様とお会いする事は
無かった!」
ウイリアムが言うと
「私もです。」
とカールも呟いた。

「では、参りましょう。」

ピットの案内で三人はカフェに
向かった。

ピットの言う通り店に入ると
テーブルにはフローレンスが
座っていて四人の魔女?らしくない
美女がフローレンスを囲む様に
座っていた。


「よくおいでました
ミャンから話は聞いております。
コチラが西の魔女アリア
私が北の魔女マヤ、それから南の魔女ジュリア
東の魔女タニア
です。

カール様、ウイリアム様モーリス様お見知り置きくださいませ。」


「あ、ああ 💦
‎こ、こちらこそ」

突然名乗って居ない名前を呼ばれ
三人は超ービックリ!


テーブルに案内されると席についた。
「ようこそ、お疲れ様でしょう
お茶をどうぞ
シャンパンでと言いたいですが
お話がおありでしょうから」

お茶を持って現れた人物は?

「ああ、ありがとう‎( ⊙⊙)!!って
あ、あなたは・・・美桜様・・・」


「ウイリアム様、カール様
お久しぶりです。
リア殿下はお元気ですか?」

三人は急に緊張した、皇妃様は
ドレスを着て奥に居られるとばかり
思っていたがエプロンをしてGパンを履きお茶を運んで来たのだ
そ、そりゃあビックリするワ

「あ、あ、はい美桜様」
三人はカチンコチン緊張しまくる。

「里帰りです。
緊張しないでください。
ココは実家なんです、お客様を
お迎えするのは娘として当たり前
です。」


「え、ああ、ご実家だと
そうききおよびました。
お母上に先ずはご挨拶をせねば」

カールとウイリアムとモーリスは
ガタガタガタと椅子を立つ

「ああ、
こちらの姉達だけです。」

美桜は日本から異世界に迷い込み
今では異世界の住人となり
レイモンド王と結婚している。
コチラでは地球が異世界!そんな
話誰が信じるのだろう、そう思えば実家とは嘘八百然し確かに実家かも
しれない。
まあなんとか誤魔化した。


「ピット、運転手さんに
食事を持って行って、ソロソロ
起きる頃だし
温かい飲みものも」
話を変えようとマヤさんがピットを見て言った。

ピットはマヤさんにウインクをすると身のこなしも綺麗に出て行った。


三人は椅子に持たれ眠っている
フローレンスを見て

「疲れがでたんだな!」
と納得していた。


「いや、そうではありません。
記憶をぬいたのです。だから目覚めた時はロレンツオ殿下の事
出会いから全てスッポリと記憶が
ありません。」


ウイリアムが不思議な顔をして
「何故?
ロレンツオ殿下の記憶を・・・
ではリア殿下との記憶も無いの
ですか?」


「ロレンツオ殿下ご自身の記憶も
抜いております。
ロレンツオ殿下御自身もフローレンスの事は分からないでしょう。
然しリア殿下の記憶もフローレンスから抜いております。
リア殿下の御自身の記憶はそのままです。」


「では、フローレンスはリア殿下
との未来を選んだのですか?」
カールが真面目な顔をして聞いた。


マヤはテーブルに置かれた食事を
三人にすすめながら話をした。

「フローレンスと私達は
先にいただきました。
皆様もお召し上がりください!
お疲れが取れます。」

ウイリアムが
「せっかくだから頂こう」
そう言ってフォークとナイフを握った事を合図に、カールもモーリスも
感謝を示し食事を始めた。
その間、4魔女は残りの説明をした。