「――――先客か」

「……は」


 そこで出会ったのがオスカーだった。
 オスカーは明らかに私よりも階級が上で、彼が一言『出ていけ』って言ったら、私はその場を後にしなければならない。けれど、オスカーは何も言わず、休み時間中ずっと何をするでもなく私の隣に座っていた。
 次の日も。そのまた次の日も。
 オスカーはガゼボに現れて、何をするでもなく座っていた。


「何読んでるの?」

「雑誌」


 時々、ポツリポツリと質問をされて、それに答える。私が持参したランチを摘まみ食いされることもあった。
 大した会話をするわけじゃないのに、何となく居心地が良くて。もしかしたらオスカーも、私みたいに学園生活に疲れているのかなぁなんて思って、親近感が湧いた。


「膝、貸して」

「……え?」


 ある日、オスカーは私にそう言った。愚鈍な私には彼が何を求めているか分からなかったけど、気づいたら膝にオスカーの頭が乗っかっていた。オスカーの綺麗な顔が私のすぐ側にあって、何だかとても落ち着かない。
 心臓がドキドキ鳴り響いて、全身が熱かった。息すら真面にできずにいると、オスカーの手のひらが私の頬を撫でた。


「俺と一緒だと落ち着かない?」


 温かな手のひらが気持ち良くて、私は思わず首を横に振った。


「……落ち着かないけど、落ち着く」


 矛盾しているって分かってるけど、それが私の正直な気持ちだった。
 オスカーと一緒にいると、ドキドキして堪らないのと同じぐらい、心が穏やかで温かくなる。
 劣等感で捻くれた私を許してもらえてるみたいで、それがすごく嬉しかった。少しずつだけど、周りと溶け込むための努力をしようと思えたのは、オスカーのお蔭だ。


「俺も同じ」


 オスカーはそう言って、気持ち良さげに目を瞑った。子どもっぽい仕草が可愛くて、胸がキュンとときめく。