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 三十日目。

 大臣の汚職疑惑というスキャンダラスな見出しの雑誌が、市場を沸かせた。

 まるでその場にいるかのような臨場感溢れる記事。大臣がお金を受け取る、決定的な瞬間まで掲載されている。

 記事への反響は大きく、やがてそれは国王の耳にも届くこととなり。

 民からの信用を失った大臣は、呆気なく辞任に至ったという。


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 六十日目。


 わたしは今も、王城で侍女を続けている。
 当然、殿下には洗いざらいぶちまけることになった。だけど、彼はわたしを許し、今もお側に置いてくれている。


「マイリーのおかげで汚職問題を一つ片づけられたからね。それに、前国王の重鎮たちの中には、まだまだ怪しい動きをしている人間が多いし」


 不満気なホーク様を、殿下はそんな風に説得した。

 つまり、わたしの念写能力が今後も役に立つと踏んで、お咎めなしとしてくれたのである。


 それどころか殿下は、わたしにお礼をしたいと言ってくれた。


「何が欲しい? 俺が贈れるものなら何でも構わないよ」


 そう言って殿下はニコニコと微笑み、わたしの手を恭しく握る。


「欲しいものと言われましても」


 正直言って今のわたしは、スキャンダル・ハイというか。
 自分が書いた記事で国や民が動いたことが嬉しくて、興奮状態から抜け出せずにいる。それだけでお腹いっぱいで、欲しいものなんて何もない。そうお答えしたのだけど。


「だったらお礼は、俺のお忍び私生活、なんて記事でどう?」


 なんと殿下は、自らそんなことを提案してきた。
 ビックリし過ぎて、目玉が飛び出るんじゃないかと思ったけど、どうやら本気らしい。何とも朗らかに微笑み続けている。


「どうかな? 大臣の汚職ほどの反響はないと思うけど」

「いっ……いえ! 是非、取材させてください!」


 そういうわけで、わたしは、合法的に、殿下を取材できる機会をゲットした。