「あの……二人が会話をしている部屋はあそこですか?」

「……? ああ、そうだが」

(カーテンが開いていれば或いは)


 わたしは急いで、近くにある大木に上り始める。


「マイリー?」


 殿下は目を丸くし、小声でわたしの名前を呼んだ。困惑しているらしい。


「殿下は二人の会話に集中していてください」


 口をハクハクと動かし、太くて丈夫な枝にしがみ付く。部屋からは少し遠いけれど、カーテンは開いている上、会話をしている二人の姿もバッチリ見える。


(あっ、ナイスタイミング!)


 見れば、男の片方が大金の入ったアタッシュケースを閉じようとしている所だった。どうやら酒宴に向けて、会場を移そうとしているらしい。

『念写』

 わたしは急いで、己の瞳にその光景を焼き付けた。何枚も何十枚も。

 やがて二人が部屋からいなくなると、するすると木を降りる。胸がドキドキしていた。