「そこでマーガレットと王太子殿下との婚約話を思いついた。王太子殿下は案外すんなりと話に乗って下さってね。あとはマーガレットをその気にさせるだけだった。それから僕は数年掛けて、殿下の素晴らしさや、王太子妃になれば手に入る生活を囁き続けた。その仕上げとして数日前、ダリアに殿下との婚約話が持ち上がったことを伝えたんだ」


 なんと、マーガレットの情報源はエドワードだったらしい。
 ダリアの心臓がドキドキと鳴り続ける。


(まさか、まさか本当に?)


 エドワードはずっと、自分を思い続けていたのだろうか。いつかダリアを迎えに来るために、今日までずっと、動き続けてくれたのだろうか。
 けれどその瞬間、ダリアの心にふと不安が過る。


「だけど、大丈夫なの?殿下はあの子のその――――ああいう欲しがりな一面を知っているってことでしょう?」

「うん、ダリアは心配しなくて大丈夫だよ。殿下はとても厳しくて強い方でね……なによりとても倹約家なんだ。マーガレットはダリアから全てを奪っていった分、教養や知識だけは無駄に持っているし。それに殿下は『我儘なぐらいが丁度いい。調教し甲斐がある』って喜んでいたぐらいだから」


 ニコリと笑いながら、エドワードは不穏なことを口にする。


「滅多なことじゃ城から出さないし、今後ダリアと会わせることも無いって。それがマーガレットにとっての最高の罰になるからって笑っていたよ」


 なおもエドワードはニコニコと笑っている。


(本当に良いのかしら……?今更だけど、色んな意味で国の未来が心配…………)


 これから妹に待ち受けるであろう未来を想像しながら、ダリアはブルリと身体を震わせた。


「殿下との婚約を今さら破談にすることはできない。そんなこと、僕が絶対にさせない。だから……」


 エドワードは穏やかに微笑むと、ダリアを再び自身の腕の中に閉じ込める。