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 あれから二年の月日が流れた。

 クロシェットの祖国では、息を潜めていた魔獣たちが再び活動を始めていた。
 そもそも、彼等が魔王だと思って倒した相手は中級魔獣であり、全く根源を断てていなかったのだから当然だ。


「何でだ……! 何でこいつら、攻撃が全然効かないんだ⁉」


 英雄として、討伐へと向かったザックは、己の攻撃が全く通用しないことに愕然とする。

 それもその筈。

 二年前、彼の傍にはいつもフェニが居て、背後から攻撃の手助けをしていた。敵の攻撃を無効化し、結界を張ってくれていたのも彼だ。フェニなしに、ザックが魔獣と互角に渡り合えるわけがない。討伐などもってのほかだ。

 被害が急速に広まっていく。
 国民から、王族から、日に日に非難の声が高まる。

 ザックはとても焦っていた。
 このままでは、せっかく手に入れた地位も、名声も、すべてを失ってしまう。