「終わった――――」


 空っぽになった屋敷の中、あたしは思わずそう呟く。
 失ったものが多すぎて、何だか無性に泣けてきた。


「なぁにが終わった、だ。お前の人生はこれからだろう」


 ダミアンはそう言って、あたしの頭を小突いた。


「でも……」

「先程使い魔から報告があった。お前の父親が目覚めたらしい」

「……! 本当に⁉」

「ああ。会話もできる状態だそうだ」

「そう――――良かった」


 涙が勢いよく溢れ出る。
 ダミアンは静かにあたしの涙を拭った。


「――――ラグエル伯爵領については、しばらく俺が面倒を見てやろう。お前の父親が元気になるまで、他に管理をする人間が必要だろう?」

「……良いの?」

「ああ。一度狙われたとあって、今後、伯爵領や伯爵の財産を奪おうとするものが出てこないとも限らないからな」


 なんともありがたい申し出だ。あたし一人じゃ領地経営は心もとないし、ダミアンならば悪いようにはしないだろう。あたしはホッと胸をなでおろす。