「馬鹿ね、ラファエル。だから言ったでしょう? そこの猫かぶり娘が良いのか? って。
メアリーはこの屋敷から追放するわ。当然よね? もう家族でもなんでもないのだもの。
それからラファエル――――残念だったわね。貴方はもう、爵位を継ぐことはできないのよ?」


 ラファエルは小さく目を見開き、それから悔しげに顔を歪ませ、メアリーを置いて屋敷を出る。

 一人残されたメアリーは、しばしの間呆然としていた。あたしはメアリーの傍に屈み、彼女の頬をそっと撫でる。


「恨むなら魅力のない自分を恨みなさい――――だったかしら? そっくりそのままお返しするわ。ラファエルは爵位を継げないなら、貴女に用はないみたいよ?」


 笑い声が木霊する。
 メアリーは顔を真っ赤に染め、屋敷を勢いよく飛び出していった。

 使用人も全員追い出してしまったから、この屋敷にはもう、あたしとダミアン以外の誰も居ない。