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「あぁ、僕のグラディア! 今日もなんて可愛いんだっ」


 それから数日後。エーヴァルトは魔法で姿を隠し、来訪者のことを観察していた。場所はグラディア邸のガーデンテラス。テーブルには三組のティーセットが並んでいる。


「クリストフ、急にお呼び立てしてすみません」

「僕がグラディアの誘いを断るわけがないよ。気にしないで?」


 そう言ってクリストフはグラディアの手を握る。グラディアの眉がピクリと揺れ動いた。


「それで? 今日はどうしたの? ……あぁ、制服のグラディアも可憐だけど、私服のグラディアは格別に美しいね。今度またドレスを贈るよ」

「いっ……いえ、クリストフにはもう、ロジーナという素晴らしい婚約者がいるのですから。今後はそういったことは控えませんと。こうしてお会いするのも、これを最後に……」

「ロジーナとの婚約は成立していないよ。グラディアだって知っているだろう?」


 先程までの調子は何処へやら、クリストフは急に真面目な声音で身を乗り出した。グラディアが頬を染め、気まずそうに後退る。