まさかそのことが、わたしの念願を妨げていたとは。
 ソーちゃんは苦笑いをしつつ、わたしの頬をそっと撫でた。


「ミラ」


 ソーちゃんがわたしの額に口づける。
 お父様がギャーギャー言ってるのが聞こえるけど、今回の件は完全に自業自得だもの。殿下が抑えてくれてるし、全く気にならない。
 勝手に娘の幸せを潰していたんだもの。少しぐらい――――ううん、猛省するべきだと思う。


「ミラ。俺と結婚したいと思う、本当の理由を教えてくれる?」


 すりすりと頬擦りをしながら、ソーちゃんが強請る。


「俺は――――素直で天真爛漫で、いつも明るいミラが好きだ。強がりで、その癖物凄い寂しがり屋で、俺が側に居て護ってやりたいと思う。
それにミラは可愛い。物凄く可愛い。俺はミラの笑顔が好きだ。くるくる変わる表情が好きだ。本当に、好き」


 飾り気のない言葉。
 だからこそ、それがソーちゃんの本心だって実感できる。


「わたしも! ぶっきら棒だけど温かくて優しい、ソーちゃんが好き! ソーちゃんが頭をポンポンって撫でてくれると、心がポカポカと温かくなる。物凄く嬉しくなる。
ソーちゃんが時々見せてくれる、くしゃくしゃな笑顔が好き! 大好き!
ソーちゃんとずっと一緒に居たいって思った。離れたくないって思った! だから、ソーちゃんの結婚相手になりたいって……」


 ソーちゃんがわたしを抱き締める。


「『ミラで良い』じゃなくて、ミラが良いんだよ。
改めて、俺と結婚してくれる?」


 それは、ずっとずっと欲しいと思っていたお返事の言葉より、何十倍も何百倍も甘やかで。
 おまけにソーちゃんの方から求婚されたんだもの。返事なんて最初から決まり切っている。


「喜んで!」


 わたし達は顔を見合わせると、声を上げて笑うのだった。


(END)