(どうやって確認する?どうやって……)

「そんな難しい顔するなよ」


 顰め面をして押し黙ったアビゲイルの頭を、トロイがクシャクシャと撫でた。


「別に、早く出ていけって言ってるわけじゃない。あんなに楽しそうな主を初めて見たし、俺たちはあと1ヶ月はここにいるから」


 はじめの方こそ掴みどころがなく、意地悪に見えたトロイだが、一緒に過ごしていくうちに案外優しい人だと分かってきた。

 男の中に混じって対等に騎士をしてきたアビゲイルは、人に優しくされ慣れていない。こういう風に甘やかされると、何だか心がむず痒かった。


「って、あと1ヶ月でここを出るのか?」

「あぁ。ここには一応禊に来ているんだ。……形だけだけど」

「そうか」


 アビゲイルたちに残されたタイムリミットは思ったよりも長くないらしい。
 用意の終わったティーセットを盆に載せ、アビゲイルは一人、重い足取りでロゼッタたちの元に向かった。

 アビゲイルが部屋に入ると、ロゼッタとライアンは神妙な面持ちで何かを話していた。


(一体どんな話をしているんだろう?)


 アビゲイルは首を傾げながら、ゆっくりと二人に近づいていく。