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 数日が経った。


「オルニア、おはよう!」

「――――――毎日毎日飽きもせず、よくいらっしゃいますね」


 事件以降、オルニアの部屋はクリスチャンの宮殿へと移されている。これまで以上に通いやすくなったため、クリスチャンは毎日、オルニアの元を訪れるようになっていた。
 彼が部屋を訪れると侍女達は皆、部屋を出る。騎士達も同じで、扉の向こうからさり気なく警護をするようになっていた。


「ああ、飽きない。オルニアの顔を見ないと一日が始まらないからな!」


 満面の笑み。彼の手には、今日も大きな花束が握られている。


「庭師が嘆きますよ? 手塩に掛けて育てた花をこう毎日摘まれちゃ、堪った物じゃないでしょう?」


 淑やかぶるのは止めた。面倒くさくなったからだ。
 けれど、クリスチャンは態度を変えない。寧ろ喜んでいるきらいすらある。


「庭師のことなら心配ない。俺が想いを遂げる日が来るのを、彼も楽しみにしてくれている。寧ろ、前よりも嬉しそうに花を育ててくれているぞ」


 ふわりと優しく抱き締められる。胸が小さく高鳴った。


「優しい庭師ですこと。本当にこの国の人達は、殿下のことを愛していらっしゃいますね」


 これまで数々の男達を誑かし、騙してきたオルニアだ。鈍くはない。けれど、クリスチャンが相手だと、どうしたら良いのか分からず、はぐらかすことしか出来ずにいる。


「そうだな。だけど俺は、愛されるよりも愛したい」


 そう言ってクリスチャンは跪く。オルニアは目を見開き、息を呑んだ。