「そうか! だったら今日は、俺と一緒に街に出よう」

「…………へ?」


 クリスチャンはオルニアの手を取り、嬉しそうに微笑む。


「オルニアの好きなものを何でも買ってやる! ドレスも宝石も、自分で選んだ方が楽しかろう。それから、女性に人気のカフェがあるそうだから、そこに行こう。好きなものを食べると良い」

「えぇ? っと……それは大変光栄なことですが、殿下がそういったことをなさって大丈夫なのですか?」


 そもそも、何処の誰とも知らぬ女を城に連れ込んだだけでも十分問題だ。そう仕向けたのはオルニア自身だが、ここまで分別が無いと、さすがに反応に困ってしまう。


「嫌か?」


 クリスチャンの整った顔がオルニアに迫る。


「どうしても嫌なのか?」


 押しが強い。おまけに、後には侍女や騎士が大勢控えている。嫌です、と言える状況にないのは間違いないだろう。


「まさか! 是非、ご一緒させてください」

(よし、途中でとんずらしよう)


 満面の笑み。裏ではそんなことを考えつつ、オルニアはこっそりとため息を吐いた。