「そんなの、夫婦だから、で十分じゃありませんか」


 当然のように言い放たれたその言葉が、ストンと胸に落ちる。


(そうか)


 夫婦だから側に居る。相手を愛そうと努力する。あまりにも単純な話だ。


「それに、アンブラ様はご存じないかもしれませんが、わたくしはあなたと一緒に居られたら、それだけで幸せなんです! 魔女の呪いなんかより、わたくしの幸せの方がずっとずっと大きい。だから、まかり間違ってアンブラ様がわたくしを愛してしまったとしてもきっと大丈夫です!」

「まかり間違って……って君…………」


 ふふっ、とアンブラの口から笑い声が漏れ出る。


「そうだね」


 額に、こめかみに、触れるだけのキスをする。ヒャッ!と頬を真っ赤にしたハルリーに、アンブラは愛しさが込み上げる。初めて感じる胸の高鳴り。目を瞑ってみても、暗闇はいつもの様に、ハルリーのことを蝕みはしない。触れて、口付けて、何度も何度も確かめる。とても、穏やかな気持ちだった。


「ハルリー、最初の約束を違えても良いだろうか?」


 君を愛することは無い――――アンブラが耳元でそんなことを囁く。


「もちろん!」


 ハルリーはそう言って、満面の笑みを浮かべるのだった。


(END)