「……茶の相手ならリヒャルトが居るだろう?」


 冷たく無口なアンブラと話すより、リヒャルトと語らう方が余程楽しかろう。
 第一、客人のもてなしは、ハルリーに課された大事な仕事だ。真面目な彼女がそれを怠り、自分のところに来るなど信じがたい。


「リヒャルト様なら今出掛けていらっしゃいますわ。
それに、ここだけの話なんですが」


 そう言ってハルリーは声を潜める。首を傾げたアンブラの耳元へと、ハルリーがそっと屈んだ。


「実はわたくし、彼のことがなんだか苦手で……」

「は?」


 それはあまりにも意外なことだった。目を見開き、ハルリーのことをまじまじと見遣る。
 ハルリーとリヒャルトの気質はあまりにも近い。底抜けに明るく華やかな二人。話題にも事欠かず、過ごしやすかろうとそう思っていた。


「ですからここ数日、少し疲れてしまって……。わたくしはアンブラ様と一緒に居ると、とても落ち着くのです。少しだけ、何も喋らなくて良いですから、側に置いていただけませんか?」


 始めて見せる甘えるような仕草。どれだけ邪険にされても、ハルリーはいつだってニコニコと微笑み、アンブラに寄り掛かろうとはしなかった。ただ側に居て、優しくアンブラを見つめ続けるだけだったというのに。


「――――配慮が足りず、すまなかった」


 知らず知らずのうちに負担を掛けていたのだろう。己の至らなさに、アンブラは深いため息を吐く。