『だとしても、俺は彼女がしたことを許せない』


 エルベアトはそう言って、眉間にグッと皺を寄せる。
 あんなことをされた後でも、キーテにはデルミーラを嫌いになれない。本気で怒ることもできない。そうと分かっていて、エルベアトは彼女の代わりに怒ってくれている。


『ありがとう、エルベアト様』


 エルベアトの胸を借り、キーテはそっと涙を流した。



 あれから二年が経った今日、二人は晴れて結婚の日を迎える。


「綺麗だよ、キーテ。誰よりも綺麗だ」


 白いウエディングドレスに身を包んだキーテに向かい、エルベアトは幸せそうに微笑む。

 会場の入り口には、キーテの描いた絵が何枚も何枚も飾られている。それはこの二年間の間に二人が訪れた数々の名所で彩られており、訪れた人々を感嘆させた。


「エルベアト様……私、幸せです。あなたに出会えて本当に良かった」


 太陽が降り注ぐ青空の下、幸せの鐘が鳴り響く。エルベアトに出会う前は、満足に外にも出られなかった。結婚など、夢のまた夢だった。


(こんな未来があることを、昔の自分に教えてあげたい)


 キーテとエルベアトは互いに顔を見合わせ、幸せそうに笑う。

 病は気から。
 キーテの身体が病に蝕まれることは、その後、二度と無かった。


(END)