◇◆◇十三歳◇◆◇

『で? 今年の理由は?』

『今年は――――ほら、わたし達は同い年でしょう? 話題が合うっていうか、色々と釣り合いが取れているかなぁなんて』


 さんざん悩んだ挙句、十三歳のわたしが用意できたのは、そんな弱々しい理由だった。


『年齢、ね』

『うん……年が離れていると、どっちが先に老いるとか、そういう話も出てくるっていうし。一度きりの人生を同じ目線で歩き続けることができるって、有難いことなんじゃないかと……』


 自信がないせいもあって、段々声が小さくなってしまう。ソーちゃんは困ったように首を傾げながら、わたしをそっと覗き込んだ。


『他には? もっと何かないの?』

『他に――――――わたし、一応顔も悪くないと思うんだけど、どうかな? ソーちゃんの好みじゃない?』


 全然何も思いつかなくて、そう口にしては見たものの、刹那。物凄い羞恥心に襲われてしまった。


(どうしよう! 穴があったら入りたい!)


 自分で自分の顔を悪くないとか! 絶対痛い女だと思われてる。ううん、そんなの元々かもしれないけど、更に幻滅されたかもしれない。


『ミラ』


 ハハッて声を上げてソーちゃんが笑う。わたしが知る限り、初めてのことだ。
 悲しくて、俯いたわたしの手をソーちゃんが握る。ほんの少しだけ顔を上げたら、彼はひどく優しい顔で微笑んでいた。


『去年までの理由よりはマシかな』

『本当!?』


 尋ねながら、思わず目を見開く。
 我ながら、何が勝因なのか全く分からない。だけど、理由なんて分からなくても、ソーちゃんの気持ちを動かせたのなら、それが正解だ。


『来年も理由を考えてきてよ』

『……うん!』


 頷いてはもらえなかったものの、結婚について少しだけ前進したのは確かだと思う。
 わたしは嬉しくて堪らなかった。