「キトリ・モリーナ!俺は貴様との婚約を破棄する!」

 卒業パーティーの恒例行事になりつつあった婚約破棄。今年もそんな馬鹿な真似をする人間がいたことに『俺』はため息を吐いた。

 婚約破棄を言い渡したのはアロンソという、俺からすれば印象のない男。彼は極端に口数の少ないことで有名な公爵令嬢ネリーンと真実の愛を見つけたのだという。

 しかし、普段饒舌なキトリだというのに、アロンソに対して何も言い返そうとしない。このくだらない茶番劇が長引きそうだと思ったその時、ネリーンが口を開いた。

「あの――――わたくしからもいくつか、よろしいでしょうか?