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「全く。クリスにはビックリさせられるなぁ。まさかあの場で、あんなことを言い出すんだもん」


 誰もいない校庭を二人で歩きながら、エリオットが困ったように笑う。


「本当にごめんなさい。自分を抑えられなくて」


 普段あれ程感情を出せないわたくしだというのに、自分を止めることが出来なかった。今でも心臓がバクバク鳴っているし、興奮で身体がめちゃくちゃ熱い。


(言っちゃったぁ……!)


 五年分の想いを言葉にできて、わたくしは何だか清々しい気分だった。
 ふふ、と笑うわたくしに、エリオットが優しく微笑む。


「頑張ったね」


 そう言ってわたくしを見つめる彼の瞳はあまりにも温かい。頬はほんのりと紅くなっていた。
 どうして今まで気づかなかったんだろうって位、彼の表情は雄弁にわたくしへの想いを物語っている。込み上げる愛しさに、自然と笑顔が溢れ出す。


「ねぇ……わたくしエリオットに伝えたいことがあるの」

「なに?」


 エリオットは急かすでも、興味無さ気にするでもなく、ただ静かにわたくしの言葉を待ってくれる。優しくて温かい、真剣な眼差し。そんな彼だからこそ、わたくしは自分らしくいられる。素直に想いを打ち明けられるのだと思う。


「わたくし、エリオットのことが好き」


 そう口にしたわたくしは、きっと、これまでで一番良い笑顔で笑っている。
 エリオットはほんのりと目を丸くし、幸せそうに笑うと、わたくしのことをギュッと抱き締めるのだった。


(END)