◇◆◇十一歳◇◆◇

 迎えた翌年。
 意気揚々と同じ提案をしたら、ソーちゃんは『なんで?』って理由を聞いてきた。


『だって、わたし達のお父様はどちらも公爵でしょう? そりゃあ、アルバート殿下の従弟であるソーちゃんの方が身分はずっと上だけど、同じ年ごろでわたしよりも高位の令嬢って居ないし、丁度良いんじゃないかなぁと思って』


 できるだけ高位の貴族と結婚するのが望ましい――――ソーちゃんだって当然、そんな風に教えられている筈だ。


『……家柄だけじゃ決め手に欠けると思うけど』


 ソーちゃんはそう言って首を傾げる。


『えぇ~? そうなの?』

『じゃあミラは、アルバート殿下に【家格が釣り合うから結婚して】って言われたら、それだけを理由に結婚する?』

『え? それは…………しないかも』


 いや、相手は王族で、本気で『結婚しろ』って言われたら断れる立場にはないんだけど。


(そっか。家柄だけで十分な理由になると思っていたんだけどな)


 政略結婚というからには、もっとメリットを提示しなきゃいけないものらしい。
 十一歳のわたしはガックリと肩を落とした。