それから数か月。
 わたくしは、エリオットのおかげで、随分感情を表に出せるようになった。

 彼と一緒に接したことがある相手となら、エリオットがいない時でも、笑顔で接することが出来る。感情を言葉にすることも抵抗が無くなって来た。


「もっと早くクリスティーヌと仲良くなれてたら良かったのに」


 既に卒業間近。そんな言葉を掛けてくれる人がいることが嬉しくてたまらない。

 それと同時に、もうすぐアルバートとの接点がなくなってしまうことに、焦りを感じていた。

 あれからアルバートとは、挨拶を交わすぐらいの関係が続いている。初めは悲しみばかりを表に出していたわたくしだけど、最近は少しずつ少しずつ、彼に対しても笑顔を向けられるようになっていた。

 その度にアルバートは、驚きと戸惑いが綯交ぜになった表情を浮かべる。わたくしは言葉にできない喜びを感じていた。



「クリスティーヌ」


 そんなある日のこと。わたくしはアルバートに呼び止められた。
 彼の傍らにいつもいるミリーの姿は今日はなく、わたくしは小さく息を呑む。


「その……卒業パーティーのことなんだが」

「……はい」


 残念ながら今、エリオットはわたくしの側にはいない。こんな風に二人きりになるのは、婚約をしていた時以来、もう何か月も前のことになる。ドキドキと心臓を高鳴らせながら、わたくしはアルバートを見上げた。


「俺のパートナーになってくれないか?」

「……え?」


 アルバートは思わぬことを口にした。わたくしは目を見開き、何度も瞬きをしながらアルバートを見上げている。ちゃんと驚きが顔に出ているか、少しだけ心配だった。


「わたくしを卒業パーティーに?」


 卒業パーティーには当然、婚約者と同席することが基本だ。まだ婚約をしていない者同士でペアを組むことはあるが、婚約者がいる人間が、他の相手を選ぶことなどあり得ない。