「しかし、おまえに本性がバレてたとはな」


 アザゼルはクラウドをチラリと見ながらため息を吐いた。
 一番近しい存在だったサラや家族達がアザゼルの本当の姿に驚愕し、悪魔と口走ったたほどだったというのに。


(あれは結構堪えた)


 敢えて必要以上に冷たい態度を取っていた事情はあるものの、サラに本当の自分を受け入れてもらえなかったことは、想像以上にアザゼルの心を抉った。


「王族だからね。そういうのは見える体質なんだよ」


 クラウドはそんなことを言って笑った。特に事情を話したわけでもないのに、クラウドはアザゼルの考えも全てをお見通しかの如くアザゼルと接する。彼の言う『見える』とはどういう感覚かわからないが、事実なのだろうと思う。


「それに、これでも俺は王族――――王太子だからね」


 そう言ってクラウドはアザゼルの側に来るとニヤリと笑った。何やら意地の悪い笑みだ。アザゼルは眉間に皺を寄せながらクラウドを睨みつけた。


「何が言いたい?」

「俺がもしもサラへ正式に婚約を申し込んだら、どうなると思う?」


 アザゼルの身体から血の気が引いた。

 こうしてフランクに接しているとはいえ、国における王族の力は絶大だ。もしもクラウドから婚約を申し入れられて、一貴族がそれを退けられるはずはない。


「おまえ……」

「ずーーっとさ、遠慮してたわけ。これでも。王妃にするならサラちゃんがぴったりだなって思ってたのにお前が婚約してたから。でも、アザゼルが婚約破棄するなら良いでしょ?そのリストの中でなら絶対に俺の方が条件良いし。ちゃんと幸せにするよ?浮気はするかもしれないけど」


 クラウドの瞳は妖しく光っていた。どうやら先程の軽口とは違い、今度は本気らしい。