「理由は?なんて言っていたの?」


 アザゼルの母親は勢いよく身を乗り出しそう尋ねる。けれどサラは返答に困ってしまった。

 こう尋ねられることを予想していなかったわけではない。初めはありのままの真実を二人に話そうと思っていた。

 けれど、サラが婚約破棄を切り出された話をしただけで、こんなにも心を痛めた二人だ。サラの口から今のアザゼルの状況を伝えるのは得策ではないように思えた。


「詳しくは……教えてくれませんでした」

「そう」


 しばらくの間、誰一人として口を利かなかった。気まずい沈黙がサロンに横たわる。けれど、ややしてサラは大きく息を吸い込むと、沈黙を破った。


「私は、絶対にアザゼルとの結婚を諦めません!」


 アザゼルに宣言した時のようにハッキリと、高らかと宣言をする。すると二人は、パッと瞳を輝かせ、コクコクと頷いた。

「そう!そうね、サラちゃん!」

 先程までの悲嘆な空気が嘘のように、温かい雰囲気が戻ってくる。ラファエラはサラの手を取ると、ギュッと握りしめた。


「私たちに任せて?あの子が何を言ってきても、絶対に婚約破棄なんて認めないから」

「ありがとうございます、お姉さん!」


 サラは力強く微笑むと、ほっと息を吐いた。