***


 そうして始まったわたし達の関係。
 彼は三日と開けず、わたしの元を訪れる。
 だけど、いつだってそれは夜の帳の中。セオドアは、屋敷の皆が寝静まった頃にやって来て、明け方早くに帰っていく。

 当然だ。
 たとえ遊びであったとしても、醜聞は避けた方が良い。将来、結婚に響くかもしれないのだから。


「プレゼントを持って来たよ」


 セオドアはよく宝石やドレス、花束を持参してくれた。
 大粒のエメラルドに、繊細なレースが見事なドレス。まるで未婚の令嬢が身に着けるような華やかな品ばかりなのが玉に瑕。わたしには勿体ない逸品だ。


「ありがとう。これを着けて婚活を頑張らないとね」


 おどけるように口にすれば、セオドアはムッとした表情を浮かべ、それからわたしの唇を塞ぐ。とても激しく、甘やかに。


「俺、サロメのそういう所、大嫌いだ」


 言葉とは裏腹に、彼はわたしをキツく抱き締める。胸が甘く締め付けられて、瞳に涙が滲む。


「そう? わたしはセオドアが大好きよ」


 そう言って微笑むと、セオドアは噛みつくようなキスをした。

 彼の瞳と同じ色をしたエメラルドのネックレスが揺れる度、わたしは得も言われぬ気持ちになる。

 彼のものになれたら良いのに――――。

 それは叶わぬ願いだと分かっている。口にした瞬間、全てが終わってしまうだろう。
 それでも、セオドアもわたしを求めてくれている気がしてしまって。


「もうすぐ、爵位を継ぐんだ」


 だけど、終わりの日は着実に近付いていた。