***


 私の出発を祝う式典は、盛大でとても華やかなものだった。これから長旅になるというのに、フリルと刺繍がたくさんあしらわれた真っ白なドレスを着て、重たくてキラキラしたティアラを付けて、妹と共に父の前に立つ。メアリーは私のよりはシンプルだけれど、華やかで上品なドレスを身に纏っていた。


「こうして、我が子を無事に送り出せることを、とても嬉しく思う」


 そう言って穏やかに笑う父に、私はゆっくりと頭を下げた。こんな出来損ないの娘を最後まで大事にしてくれた父には、感謝の気持ちが絶えない。胸がほんのりと温かかった。


「後のことは任せたぞ、レイリー」

「はっ」


 けれど次の瞬間、父から発せられた思わぬ言葉に、私は大きく目を見開く。


「……え?」


 レイリーはこちらに向かって真っ直ぐ歩いて来たかと思うと、私の前で跪いた。メアリーは何も言わないまま、黙って前を見据えている。


「お供させていただきます、我が君」

「な、にを……私はもうすぐ、この国を発つのに」


 輿入れには、侍女を含め、数人を連れて行くことになっている。けれど、彼等はもう、この国に戻ってくることは無い。私と人生を共にし、隣国の人間として生きて行くことになる。


「――――レイリーたっての願いでね。おまえに付いて行きたいと……側で守りたいというから、私が許可したんだ」


 そう口にしたのは父だった。レイリーは何も言わず、真っ直ぐに私を見つめている。


(なによ、それ)


 頭の中はパニック状態だった。嬉しいのか悲しいのか、どうしたいのかも分からぬまま、私はゆっくりと口を開いた。