「ごめんなさい、オスカーのことが遊びだなんて嘘なの。私、オスカーが王女様と婚約間近だって……他の女性とも遊んでるって聞いて、一人で勘違いして、あなたを沢山傷つけた。謝って済む話じゃないかもしれないけど……」

「ううん。俺もミアが何も知らないからって、事情を一切話していなかった。そんな状態で噂を聞いたらミアがどう思うか、ちっとも考えてなかったんだ」


 オスカーは私の涙を拭いながら、何度も頭を撫でてくれる。


「他の人にはどんなに誤解されたって構わない。だけど、ミアにだけは、きちんと全部を話さなきゃならなかったのに」


 ごめんね、と口にしながら、オスカーは私の額に口づける。途端に全身がじわじわと痺れて、胸がいっぱいで堪らなくなった。


「ミア……あの日できなかった話の続きをしても良い?」


 オスカーは私を抱き締めながら、いつもみたいにポツリと尋ねた。
 心臓が早鐘みたいに鳴り響く。オスカーに聴こえちゃうぐらい大きいんじゃないかなぁって思ったけど、ふと気づけば、私と同じかそれ以上に早いオスカーの鼓動が聞こえてきた。


「俺はミアが好きだよ」


 勘違いしようがないように、オスカーは心を砕いて言葉を紡ぐ。実直で温かいオスカーの言葉が胸に蓄積されて、ポッと温かくなって、それが私の自信となる。


「はい」


 もう彼の気持ちを疑うことも、釣り合わないなんて思うこともしない。真っ直ぐにオスカーを見つめると、彼は照れくさそうに、けれど幸せそうに笑った。


「これから先もずっと、俺にはミアだけだ。だからミア――――俺と結婚して?」


 身体中にオスカーの温もりと幸福感が広がって、胸がときめく。こんな甘やかな鼓動の高鳴り、絶対オスカーとしか味わえない。


「喜んで」


 そう口にして、私達は顔を見合わせて笑うのだった。


(END)