翌日、顔を合わせても『おはよう』の一言もなく、重苦しい朝を迎えた。

その気まずい空間から逃げ出すように、早くに部屋から出た。


……決めた。

2年生になったら普通科に移ろう。

運命の相手と生活できないのは悲しいけど、あんな人と3年間を共にするなんて私には到底できない。

八神くんには、ペアを変えてもらおう。

この1年間は、極力関わらないようにしよう……。



「はーい♡生徒諸君!
今日は先輩も後輩もいない君達のために私達が新入生歓迎会を企画しました―!
まだ出逢ったばかりのパートナーと、どうやって距離を縮めていいか悩んでいる子もいるはずだから、
力になりたいと思ってこんなゲームを用意しました!」

再び体育館に集められた私達。

マイクの前で話していた七海夫婦の奥さんが指をパチンッと鳴らしたと同時に、
ハートの形をした大量に風船が振ってきた。

……え?

「この風船の中には色んな質問の書かれたカードが入ってます。
2人で風船を割ってゲットした質問に答え合って、お互いを知るきっかけにしてね。
一番多く割れたカップルには食堂タダ券1か月分をプレゼントしまーす♡」

……お互いを知るきっかけ……。

このゲームを通して何か変わるかな?


「ちなみに風船はこうやってお腹に挟んで2人で抱きしめ合って割ってね♡」

ギュっと抱き合った七海夫婦の間に挟まれていた風船はパンッと音をたてて割れた。


え……?

……えっ!?

「それじゃあスタート!」

学園長の声で他の生徒たちは照れながらもゲームを始めている。


……冗談だよね?

出逢って1日しか経ってないのに……。

極力関わらないようにしようって決めたばっかなのに……。

抱き合って風船を割るだなんて……。


それに……。