そう願ってこの学校に入学してきたのに……


「あ、あの……月島凛…です。3年間よろしくお願いします」


先に部屋に戻っていた彼に頭を下げれば、


「…俺は、八神凪」


さっきと変わらない冷たい声で返される。


でも、無視はされなかった……。


心の中で安堵していると、目の前に来た八神くんはグッと私に顔を近づけてくる。


「……っ」


「先に言っとくけど、俺お前と馴れ合うつもりはないから。俺は、金持ちになるためにここに来たから」


穏やかになった心に一瞬で冷たい風が吹き込む。


「え……」


「お前、あからさまに運命の相手を見つけに来たみたいな顔してるけど、運命の相手とかいるわけねーだろ。夢の見すぎ」


一言もこの学校に来た理由なんて言ってないのに、当てられたことに驚いたし、それがバレバレだったことにも恥ずかしくなった。


だけど一番は……


『夢の見すぎ』と言われたのが悲しかった……。


「…そ、そこまで言わなくても……」


「まぁ別に何でもいいんだけど、俺に運命とか求めんなよ。めんどいから」


それだけ言った八神くんは、背を向け自室に行ってしまった。