運命の出逢い


それから数日後。


「おはよう、生徒諸君!」

「今日は私達学園長が直々に新しい行事のお知らせにきたわよ―!!」

勢いよく開かれたドアから現れたのは、派手な格好をしている学園長夫婦。

ボーっとしながら学園長夫婦の話を聞き流していると、

「ということで来週、デート遠足を行いまーす♡」

という言葉が耳に飛び込んでくる。

しかも『手を繋いでいないと減点』という最悪な条件付き。

あ―、めんどくさっ。

でも、社長になるためには、これを乗り越えないといけないんだよな・・・。



憂鬱な気分で迎えたデート遠足当日。

みんな遊園地という場所にテンションが上がっているのか、いつも以上に楽しそうな笑顔を浮かべている。


「はーい、それではここからカップルごとに自由行動でーす。
くれぐれも節度は守ってハメを外しすぎないように!」

手を繋いで散らばっていくクラスメイト達。

…月島、絶対こんなの嫌がってんだろうな。

ゲームをした日から変化したことと言えば、挨拶を交わすようになったことだけ。

あの日は笑顔を浮かべていたけど、月島がまだ俺にぎこちなく接しているのは何となく感じる。

それに、あの日の笑顔をあれから1回も見てないし。

他のペアは教室でも話しているし、常に楽しそうな雰囲気を感じるけど、俺達にはそんな空気感は一切ない。

明らかに他のペアとは心の距離が遠い…。


その原因が、初日にとった俺の行動だと分かってるけど…。


その場にいる人たちも少なくなり、そろそろ俺達も動き出さないといけなくなる。


ゲームをした日のように端っこにより上手く逃げる術はないし…。


「おい、行くぞ」

覚悟を決め、月島の手を取り歩き出せば、案の定驚いているのが背中越しに伝わってくる。


それからどこへ向かうのか見当もなく歩いていれば、月島に呼び止められ思わず足を止める。

「手…」

と視線を下に向けた先には、繋がれている手。

嫌だろうけど我慢しろと言えば、嫌じゃないという予想外の言葉が聞こえてくる。

それに加えて嬉しいという言葉まで続く。

思わず自分の耳を疑いそうになる。


「……なんなんだよ、お前。意味分かんねー」

男が苦手と言いながら、手を繋げば嬉しいなんて言葉を言うし…。

俺の声が聞こえなかったのか、俺の方に体を寄せてくるし…。

ありがとうって嬉しそうな笑顔で見上げてくるし…。


…知らない。


どうしてこんなに胸がザワザワするのか…。


いや、気付きたくない…。