月島の手を取り、端っこの方へ移動する。
そして、月島の髪に付けられていたヘアピンで風船を割って、好きな食べ物を聞けば、
『グラタン』と言う何とも女の子らしい食べ物が出て来た。
理由を聞かれ、答えれば、月島は驚いたように目を見開いた。
「わ、私別に八神くんのことは嫌いじゃないです」
予想していたのとは違う言葉が聞こえ、今度驚いたのは俺の方だった。
嫌われてなかった…。
今まで俺に近付いてくる女たちは、顔目当てばっかりだった。
自分の彼氏をブランドのように自慢しまくり、願望ばかり押し付けてくる。
女なんて、自分勝手なおんなだらけだと思っていた。
だから、相手に嫌われようが、どう思われようが正直気にしたことがなかった。
でも…月島に嫌われてなくてホッとしている自分がいた。
ホッとしている自分に驚いて、男とどう接していいか分からないと言う月島に
「…だったら俺で練習すればいいんじゃね?」
なんてバカみたいなことを口走っていた。
…俺はバカだ。
金目的で入学したはずなのに…。
社長の座を狙うなら、相手の意思なんて関係なく流れ作業のようにやってしまえばいいのに…。
人目につかない隅で、質問を答えて、質問の答えを聞いて…。
最初の方は緊張していた雰囲気だった月島は、いつの間にか笑顔を浮かべていた。
その顔を見て、また胸がザワザワしたのには必死で気付かないフリをした。
