"セブンオーシャン"の社長、もといゴールデンカップルに選ばれるためには、ペアの相手がこの上なく重要だ。

勉強ができなかったり、足を引っ張られるような奴だけは勘弁してほしい……。


そう思いながら、部屋のドアを開ければ、

「ぁ……」

小さな声が聞こえた。

その声の方を向けば、華奢な女の姿。

雰囲気的に大人しそうなイメージを感じる。

真っ黒なストレートな髪の間から大きな瞳がこちらを見ている。


「あんま足引っ張んなよ」

そう言えば、開きそうになった口はアナウンスによって遮られた。


……入学式。

めんどくせ……。

そう思いながらペアの顔を見ずにそのまま部屋から出た。



入学式後。


「あ、あの……月島凛…です。3年間よろしくお願いします」


椅子に座っていた俺に向かって、頭を下げた。

…月島凛。

なぜかその響きを気持ちいいと思ってしまった。


「…俺は、八神凪」


そう思ってしまった自分に驚きながらも冷静に返す。

俺が答えれば、月島は嬉しそうに顔を綻ばせた。

その表情を見た瞬間、胸がザワザワとし始める。


だから…それを悟られないように口を開いた。


「先に言っとくけど、俺お前と馴れ合うつもりはないから。俺は、金持ちになるためにここに来たから」

「お前、あからさまに運命の相手を見つけに来たみたいな顔してるけど、運命の相手とかいるわけねーだろ。夢の見すぎ」


そして、畳みかけるように言葉を発していた。

自分でも言い過ぎだなんて頭では分かってる。

でも……どうしても止まらなかった。


チラッと月島の顔を見れば、さっきまでの嬉しそうな顔はどこにもなく…。

大きな瞳に涙を浮かべていた。

……やばっ。


そう思ったけど、謝罪の言葉が口から出てくる代わりに、足が逃げるようにその場から離れていた。