「…俺も、好きだ……」


時が止まった気がした。

呼吸の仕方を忘れて、自分の耳を疑った。


いま……八神くんが……。


「……うそ」


現実の世界の出来事だとは思えなかった。

自分の都合がいいように作り上げた夢の世界かと思った……。


「嘘じゃないよ。俺は…凛のことが好きなんだ」


耳元で聞こえる八神くんの声。


…しかも、凛って……。

出逢ってから今まで『お前』としか呼ばれなかったのに……。


「……ホントに……?」


「気づいたら、頭の中凛のことばっかりだった。凛の笑顔を見たいと思ったし、他の男に触られてんのは嫌だった。こんなこと今まで無かったのに……。…これが好きってことだろ?」


…私と同じ。


「この先、凛以上に好きになれる人なんていないから、俺と……結婚、してくれる?」


……結婚。


私には夢のまた夢だと思っていた……。


でも……


「う、うん……」


きっと私も八神くん以上に好きになれる人なんて現れない……。

結婚をするならこの人がいい……。



出逢いも印象も最悪。

絶対に私の運命の人じゃないって思った…。

でも……助けてほしいと一番に頭に浮かぶのも、笑顔を見てドキドキするのも、触れられて安心するのも……

八神くんだけ。


"一攫千金婚校”と呼ばれるこの学校で、私は出逢った。

結婚したいと思える、運命の人に―――。