私の気持ちには答えられないっていう無言の返事なのかもしれない……。

八神くんは優しいから、どうやって断ろうか考えてるのかもしれない……。


そう思ってしまったら、この場にいるのがいたたまれなくなり、
八神くんの体を押し返すとバッと勢いよく立ち上がった。

幸いなことに、さっきまでの体の震えはなくなり、足にもしっかりと力が入った。


「……ご、ごめんなさい…。さっきのは忘れてください……っ!」


踵を返して、その場から去ろうと一歩足を踏み出した瞬間、
グイと後ろ側に引っ張られたと思えば、何かに包まれる。


「……っ」


「さっきの……ホント?」


後ろから首元に回されている腕。
背中に当たる厚い胸板。


「……え…」


「…好き、って……」


首を縦に振ることも、横に振ることもできずに立ちすくんでいれば、


「……嬉しかった」


予想もしていなかった言葉が聞こえて、耳を疑う。


「……うれしかった…?」


「……うん。だから、忘れるなんて、できない」



「…冷たい言葉を吐きながらも、気遣ってくれて…、助けれてくれて……嬉しかったです。一緒にいた時間は短いけど、でも知れば知るほど、八神くんの優しさに触れれば触れるほど……好きになってるんです……。八神くんが運命っていう言葉を信じないっていうのは知ってるけど……どうしても…好き……」


口から想いを伝えれば伝えるほどどんどんと溢れてきて、さっき散々泣いたはずなのに涙が零れてくる。