『俺のだから』

何故かいきなりさっきの男の人たちに八神くんが言った言葉を思い出して、心拍数が一気に上昇する。


……分かってる。

『俺のパートナーだから』

居てくれないと金の夫婦の卵になれないっていう意味だって分かってる。

彼にとって私は、社長になるためのひとつの駒でしかない。

……分かってる……けど……。




「……好き」




無意識に口から出ていた。




……あれ?私、いま……。


何て言った……?


数秒後に無意識のうちに言ってしまった自分を恨んだ。



こんなの…絶対……。


……引かれる。


男の人が苦手だって言ったのに、出逢って間もない人を好きなったなんて……。


しばらく無言の時間が続き、心臓の音が八神くんに聞こえているんじゃないかと不安になる。


それにしても……ここまで無言なことってある?


もしかして、さっきの私の言葉が聞こえてなかったのかな?

それならそれで、ホッとするけど……。


でも、今この場所には2人しかいないし、周りは静かだし……。



あぁ……この沈黙が答えなのかもしれない……。