誰か……助けて……。
―――八神くん……っ。
頭の中に咄嗟に出てきたのは、一番に助けを求めたのは、八神くんだった。
最初は、こんなパートナー無理だと思った。
初対面で『俺の足引っ張んなよ』とか言ってくるし、
人の心を傷つけるようなことを平気で言ってくる。
遠慮って言葉を知らないの?って……。
だけど……私の事を気遣ってくれた。
言い方は冷たいし、いつもツンツンしてるけど、私が何か話しかければ、
興味のないような返事でも返してくれた。
…無視はしないでくれた。
出逢って少ししか経ってないけど……私は知ってる。
八神くんが本当は優しい事を……。
普段ももちろんカッコいいけど、笑ったらもっとカッコよくて、ドキドキする。
それだけじゃなくて……。
いつからか、八神くんといるといつもドキドキしてる私がいる。
……恋なんて知らない。
でも……
「何してんの?」
後ろから聞こえた声にハッと振り返れば、鋭い視線を男の人たちに向けている八神くん。
……八神くんだ…。
「は?誰お前?」
「そいつ俺のなんだけど」
グイッと引っ張られて、八神くんの方に引き寄せられる。
「お前らに関係ねぇだろ」
そう言って、私の手を取って走り始めた八神くん。
つながれている手は温かくて、ホッとする。
さっきまでの気持ちなんて、どこかに消えて行った。
『好き』なんて分からない……。
でも―――……
八神くんに感じるこの気持ちが恋愛感情じゃないとするなら、
きっと私は恋なんて、『好き』っていう言葉を一生分からない……。
私は、八神くんのことが……
好き―――。