デート遠足、当日。

「はーい、それではここからカップルごとに自由行動でーす。
くれぐれも節度は守ってハメを外しすぎないように!」

学園長の言葉で散り散りになり始めるクラスメイト達。

当たり前だけど、みんな手をつないでいる。

「おい、行くぞ」


声が聞こえたと思えば、手を握られびっくりしている私は、ただただ八神くんについていくことしか出来なかった。


「あっ、八神くん!」

どんどん進んでいく八神くんを引き留めれば、ピタッと足が止まり、いきなりすぎた私はそのまま八神くんの背中にドンとぶつかった。

「なんだよ」

…八神くんは優しい。

男の人が苦手な私を気遣ってくれたし、今だって声をかければ止まってくれた。


「手……」

チラッと視線を下に向ければ、ガッチリと握られた手。

「しょうがねーだろ。つないでないと、減点なんだし…。嫌だろうけど、我慢しろ」

「……ううん、嫌じゃない」

自分でもびっくりしている。

『手をつなぐ』って聞いた時は不安だったけど……。

いざそうなった今、嫌だとは1ミリも思わない。

いきなり握られた時はびっくりしたけど、嫌じゃない。

むしろ―――……

「う、嬉しい……」

恥ずかしくて小さな声だったけど、八神くんにはしっかり届いたようで、目を見開いた。


「……なんなんだよ、お前。意味分かんねー」

「え?なに?」

ポツリと何かを言ったような気がしたけど、はっきりとは聞こえなくて、思わず八神くんの方に体を寄せた。


「……っ。…どっか行きたいところあんの?」

体を押し返されながら聞いてくる。

え……?

「女子ってこういうところ好きなんだろ?行きたいところあんだったら言えよ」

言い方は冷たい。

でも……

「ふふっ。…ありがとう、八神くん!」

思わず緩んだ頬で彼を見上げた。


「私あのジェットコースター乗ってみたかったんだ!」

指をさした方には、りぼんランド内の最長のジェットコースター。

「あっそ」

冷たい返答のわりには温かい手。

その手に引かれ、私達はジェットコースター乗り場まで向かった。


―――ドキドキしている胸の音に気付かないフリをした……。